エクイティクラウドファンディング投資の基本
それでは具体的にエクイティクラウドファンディングのメリットとデメリット、そして投資方法と利益確定の方法を見ていきましょう。
エクイティクラウドファンディングの魅力とメリット
まずはエクイティクラウドファンディングの魅力とメリットについて考えてみましょう。
- リターンの大きさ
まずは皆さんが通常思い描く夢の部分から話したいと思います。未公開株に投資するという事は、上場の条件を満たしているかという検査がまだ行われていない会社に投資するという事ですので情報が少ない中での投資になりますが、その分株価収益率などの指標で株価が判断できるという状態ではありませんので取得する際の株価は早いラウンドで投資した方が株価が安いという単純な図式になる傾向にあります。初めのラウンドでは株価は1株1ドル位が多いですが、それ以下の1株30セントなどのケースもあります。その後のラウンドでは会社の売り上げや知名度が上がってきますので1株10ドルほどに上がっている事が多いです。その後に会社が順調に成長し、IPOにこぎ着けた際は上場時の適正株価設定が引受先の投資銀行などでされるので一概にいくらになるとは言えませんが、1株20ドルから1000ドル以上と幅は広いです。上場後しばらくは売れない期間(ロックアップ期間)がありますが、売れる期間が来た時に売ったとして20倍位のリターンが期待できるという感じでしょうか。ここ最近の株式投資では上場後でも10倍になる株などもあるので少なく見えるかもしれませんが、もしそういった会社に上場前に投資していた場合は200倍になるという計算になります。もちろん投資先の会社がユニコーンのように大成功するとリターンは青天井でリタイア確定のパターンになります。
- 新しい技術やサービスを知る事ができる
通常の株式投資ではある程度でき上った会社がそれなりに認識されだしたマーケットにいかに早く参入して利益を上げるかどうかが議論される所だと思いますが、スタートアップ企業の場合はまだマーケットがない所に成り立つかわからない技術をもってマーケットを作り出すという所に醍醐味があると思います。投資先を探していると思いがけないような新しい技術とかにも触れられるので見ているだけでも楽しい上に、自分もその一員として参加できるというのが素晴らしい事だと思います。スタートアップ企業を見ているとこれから発展しそうな技術分野を中心に新しいサービスを提供したり、BtoBのサービスを最新技術でBtoCに落とし込んだり、様々な新しいアイデアが非常にたくさんあって飽きが来ません。
- 将来性
この分野は今までクローズドの取り引きが一部の人の間で行われていたもので、会員制クラブのパーティーのようなものでした。これからは一般に開放されていく動きが加速され、投資上限も規制緩和の方向にあるのでいづれはもっと普及していく事になるのは間違いないと思います。そのうち今でいう所のRobinhoodのようなアプリでサクッと投資するような環境になるかもしれませんね。
- ベンチャーに投資するという親近感
これは人それぞれで、クールにリターンのみを期待する方はあまり興味はないかと思いますが、会社が小さな分親近感が持てます。投資家も少ないのでそのうちの一人という事で会社の報告を詳しく読んでみたり、製品を買ってみたりして応援したりというのが楽しめる方はいいかもしれません。プラットフォームにもよりますが、質問なども受け付けており丁寧に質問にCEOが答えてくれたり不定期に報告を送ってくれたりするのでそれを見ているのも楽しいです。
また、私はある会社に投資していた際に誤ってAcreditted investorの カテゴリーで書類を提出してしまった事があり、その会社が1回のラウンドのRegCFの上限を超えてしまったので私の投資をRegAでの投資に変えてくれないかとCEOから直接メールがあったりした事もあります。非常に親近感を覚えますね。
- 株主特典
未公開株に投資する際にある額以上投資すると特典があったりします。例えば500ドル以上投資するとその会社が提供するサービスの10%割引や、さらに上の投資額であれば割引率が大きくなったり、非売品のアイテムが貰えたりします。
- 市場動向に対しての株価の下落圧力が低い
これは意外な部分かもしれませんが、未公開株は公開株のように自由に売れないのでたとえ株式市場がリーマンやコロナショックのようにクラッシュを起こしたとしても、金利や為替が大きく動いても投資家は売ることができないのでそのまま保持する事になります。つまり、株価(非公開で取引された場合の価格や見積価格)は何が起こっても売り買いがなければそのまま維持されるので意外とクラッシュに対して強いという事になります。
エクイティクラウドファンディングのデメリット
次はエクイティクラウドファンディングのデメリットについて考えてみましょう。
- 投資を回収するまでの長さ
ベンチャー企業に投資するという事は、上場するか買収されるかというエクジットができる状態になるまで忍耐強く待つ必要があります。また、それがどれくらい先になるのかが不明であるのでいつ回収できるのか目途が立たない事が資産運用上のネックになってくると思います。
このように未公開株投資は先が見えない中で夢を買うというスタイルの投資になりますので通常の株式投資のスタンスではなく、余剰資金のような無くなっても問題ない金額の範囲(ポートフォリオの5-10%くらい)でのんびりと投資を行っていくスタイルになります。株を購入した後はそのまま投資資金は忘れてしまえるくらいの意気込みが必要だと思います。
- 情報の少なさと透明性
情報は企業のWebページやプラットフォームを通した情報がメインになりますので上場企業のような透明性はなく、データも少ない中での投資判断になります。少ない情報から起業家の人格やプロダクトに関しての完成度、ビジネスのやり方などを調べた上で、自分自身のガットフィーリング的な嗅覚で投資判断する事になります。中には胡散臭そうな会社もありますので嗅覚を駆使して投資する必要があります。
- 現在株価が不明
上場株投資と違って市場で取引されていないので現在価値がわかりません。自分の投資した資金がどれほどになっているのかは上場まで確認ができません。最近は未上場株の取り引きが可能になって来ているのでこの部分は改善される事になると思います。
- 配当がない
資金を投資してる間に全くリターンがないという事を考慮する必要があります。上場するまでは投資資金は死に金であり、上場までにそのまま死んでしまう可能性も孕んでいます。
- そもそも会社がうまくいかない可能性がある
ベンチャー企業は情報が少ないので現状把握は会社が提示する情報やその他あらゆる検索を駆使して自分で調べる必要がありますが、先行きが不安定であり最終的には収益が減っていって倒産や身売りしてしまう可能性もあります。倒産すればもちろん出資した資金に対しては帰ってこない事になります。また、市場の構造上ヘッジなどができませんので買いオンリーの投資です。
- IPOにこぎ着けてもすぐに売れない
ロックアップ期間というのが設定されているので、初期投資家は上場後90日から180日くらいは保有株式を売れない契約に通常なっています。これは上場後に下がったりした場合は指をくわえて見ている事になりますが、この期間の間に株式オプションが設定された場合はプットオプションを買ってヘッジする事が可能になりますので何とかなるのではと思います。
- 上場後に現金化するコスト
ここは私はまだ経験がないのでわからないのですが、調べた範囲でコメントします。上場先の市場が大手のニューヨークやナスダックなどではない場合は、自分の保持している株式を株式ブローカー(証券会社など)を仲介して売る時に手数料が非常に高くなるか、最悪ブローカーが取り扱ってくれない事もあるそうです。大手の市場であっても、ブローカーの口座に自分の株を移してもらう手数料も高くつくと聞いています。つまりエクイティクラウドファンディングは投資額の下限は$100などからスタートできますが、$100が20倍になって$2,000になってもすべて手数料で取られて終わるという危険性を考慮しなくてはいけません。例えば$1,000程投資したならば、20倍で$20,000になりますので手数料を引かれても利益は残りますので最低投資額ではなくある程度の額を投資する必要があるとおもいます。もしくは、上場後もそのまま数年保持し続けて100倍、200倍になった時に手数料を支払ってエクジットするというのも可能ではないかと思います。
エクジット(出口戦略)
未公開株投資ではここが一番大事な部分で、現金化のタイミングが利益確定の瞬間です。ここではいくつかの可能性について考えてみましょう
- ベンチャー企業がIPOまでこぎ着けて上場する
これが我々スタートアップ投資家の夢であり一般的に聞かれるエンジェル投資家のサクセスストーリーはこれですね。何年か待った末にいよいよ会社が株式市場に上場して晴れて取引ができるようになるわけです。すぐに利益確定するかさらに2,3年保持してさらなる利益を狙うのかという判断をすることになります。こうなるケースは全体の1%以下だと言われていますが、もしこれを当てることができれば他が全て失敗したとしても十分回収出来るかそのままリタイアする程稼ぐかというほどの破壊力があります。エクイティクラウドファンディング投資ではこのストーリーをメインに狙う事が醍醐味といえるでしょう。Facebookのケースでは2004年に1000ドル(約10万円)投資していたとすれば、2012年に330万ドル(3億3千万円)になるというようなケースです。(8年で3300倍)
この際に注意点としては、上場後すぐには売れないという事です。ロックアップ期間というのが通常は株購入時の契約で設定されており、通常は90日から180日で場合によって違います。これは会社の創始者や社員などのInsiderの株保有者に設定されていますが上場前に投資をしたVenture capitalや投資家も含まれます。もし会社がSPAC上場になった場合は180日から1年くらいになります。また、ロックアップ期間明けが決算と重なるタイミングになったりした場合はインサイダー取引の懸念から少し伸ばされる場合もあります。これはSECによって強制されているわけではなく、IPO直後の売り圧力による株価下落やそれによって招かれる会社の将来性に対する負の認識(新規投資家が株価下落により投資を敬遠するかもしれない)を避けるために一般的に設けられているようです。
- 上場会社による買収
これも結構な確率で起こりえる事例で、全体の3割くらいでしょうか。例えばスタートアップ会社が成功してValuationが$50Mに達したとしてもNasdaqやNYSEに上場する条件にはまだ達しないので、その間に会社が将来性のある技術などを持っていた場合は同業種の上場会社が買収し、自分の会社の一部署として組み込みます。この場合は買収した会社の株式を自動的に保有する事になりますので、保有株が買収先の会社の株に切り替わり次第、直ぐに売却が可能になります。利益は買収先企業が一株いくらで買い取るかに依存しますが、このケースでは初期投資よりも利益が取れる価格となります。もちろん悪い場合も存在し、会社が伸び悩んだり立ち行かなくなった場合にビジネスを買ってもらう身売りのケースです。まず借金が返済された後、残りが投資家に分配されます。初期投資額が返ってくる位ならラッキーですが、ペニーほどの返還で終わるケースなど様々です。
- SPACによる買収
SPAC(Special Purpose Acquisition Company)というのが最近結構聞かれるようになりましたが昔からあったようです。これはエース級の投資家や実業家や業界のプロなどが集まって会社を作り、まず上場します。この時点では何も事業活動を行っていませんが上場により資金を調達する事が目的の会社なので当然と言えば当然です。その後約2年程の期間で目ぼしい非上場企業を探して買収し、SPACは買収した企業の名前に変わります。非上場企業からすると上場の手続きを終わったSPACに買収されることにより煩雑なSECへの上場手続きをスキップしていきなり上場する事が出来ます。もし2年以内に企業買収がされなかった場合は解散になり、資金は投資家に返却されます。2019年頃から巨額調達が聞かれるようになりました。その性質上Blank check company(額面が書いていない小切手)とも呼ばれます。詳しくは別の機会に詳述します。
- 2次市場での売却
スタートアップ企業を扱っているプラットフォームが最近2次市場を開設し、上場前の株式の売却が可能になりつつあります。つまり、上場を待つことなくエクジットできるメリットがあります。この分野はこの先伸びていくと考えられます。希望的観測ではありますが、SECの規制なども次第に緩やかになって行く事で環境が整ってくるのではないかと思っています。
- 倒産や解散
これは起こってほしくない事例ですが残念ながら覚悟をしておかなくてはいけません。投資意欲に水を差す形になりますが、スタートアップ会社の5割ほどはこのパターンになります。会社の解散価値を投資家で分配しますが、従業員給料やその他の借金などを返した後の残りの価値というのはほとんどないケースが多いと思います。
- マネージメントエクジット
色々な呼び方があると思いますが、このケースはスタートアップ会社の主要投資家(ベンチャーキャピタルなどのビックプレイヤー)が会社の支配権を大きくしたいために小口の投資家から株式を買い取るケースです。上場会社が一部署としてやっているInvestment firmなどが投資のリターンを回収する以外に投資している有望な会社の支配権を大きくしたり将来その会社を買収するための目的としての場合などに使われるようです。
どうやれば投資できるのか
エクイティクラウドファンディングの性質が大体わかってきた所で、具体的にどのように投資が始められるのかに触れたいと思います。ここではファンド型の投資形態ではなく直接株式を保有する形態に関しての説明になります。
- 未公開株を扱っているプラットフォーム会社(ポータル会社)を使用する
皆さんDeal flowという言葉をご存じでしょうか。未公開株投資のケースでは、たまたまスタートアップの創業者などとつながっていて投資機会に参入する事ができるような状態をさしますが、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルなどの方々が通常やっている事で、我々一般投資家にはそのようなDeal flowにタッチできることは稀です。そこで、我々はファイナンスをしたいスタートアップ会社とクラウドファンディングで投資したい小口投資家とをつないでいる証券会社のようなポータルと呼ばれるプラットフォーム企業を使用してDeal flowに参加する事になります。現在アメリカには50から60社程の様々なプラットフォームがありますが、各会社によって扱っているスタートアップの会社は違います。2つの場合が考えられます。
登録されているポータルのリスト(FINRAのリンク)
https://www.finra.org/about/firms-we-regulate/funding-portals-we-regulate
- ポータルを巡回して目ぼしい会社を見つける場合
基本的にはポータル会社によってある程度のデューデリジェンスがされた状態でリストに載りますので、とんでもない会社はないと思うのと会社情報が少し乗っているので目ぼしい投資先を検索する上ではポータルのサイト上で検索するのもいいと思います。また、ポータルのサイトで自分の投資履歴が管理できたり、特典があったりするので一定の会社のみを使用するのもメリットがありますが、投資先企業がそのポータルでないと投資できないという場合以外に、わざわざ新しい所にアカウントを作ったりする事は私はやっていません。
- ウェブサイトなどで気になったスタートアップ会社が見つかり、扱っているポータル会社を調べる場合
投資したい会社が見つかり、いざ投資という段階になるとその会社の株を扱っているポータルで投資をする事になりますので毎回違うポータルを使用しなければならないパターンもあります。その都度新しいアカウントを作ることになりますが、投資をしてそのラウンドがクローズすると株式譲渡の契約書がポータルからメールで送られてきて、それが終わるとポータルは単に投資履歴を確認するか、投資先スタートアップが送ってくる定期更新情報を受け取るためのツールという形になりますのでいくつアカウントを持っていてもそれほど問題ではありません。また、各ポータル会社も最低投資金額は100ドルとか500ドルとか会社によって違いますが非常に少額に設定されています。(先の項で述べましたが、あまり少額だと現金化の手数料でやられる可能性があります)
それでは私の経験のあるものを中心に、どのようなポータルがあるのか見てみましょう。また、皆さんでも独自に調べていただき、自分に合った所を探してみるのもいいのではないでしょうか。
Wefunder
この会社は一番有名なうちの一つで、私も数個のスタートアップ投資で使用しています。スタートアップ企業のリストも多いので投資先にいろいろ迷います。投資した会社の創業者に対して質問ができるフォームがあり、そのコメントを読んだりするのも楽しいです。また、創業者との人間関係もよさそうで、私が投資の際に問題があった時にスタートアップ創業者からメールで直接確認が来たのですが、どうすればいいかわからないという事を伝えると、担当のWefunderの人にCCで繋いでくれてすぐに返答して解決してもらえました。スタートアップ企業を検索するのにとりあえず巡回するという風に使うだけでもメリットがあると思います。
StartEngine
アメリカでスタートアップ企業が自身の製品やサービスを紹介して投資家にアピールするShark tankという有名なテレビ番組があるのですが、そこに出演しているうちの一人の投資家のChris O’Learyという人(Mr. wonderfulと呼ばれる)がアドバイザーとして投資している会社で、実はこの会社自身が去年の中頃にクラウドファンディングで資金調達していました。このラウンドでStartengineに1000ドル以上投資すると、株主特典でなんと一年間はStartengineで扱っているスタートアップ企業に対しての投資に対してさらに10%のボーナス株がもらえました。この会社は最近2次市場での売買が可能になっていて、その機能を強化するように逐次アップデートを行っていくようです。このプラットフォームも創業者に質問するフォームがあります。
Netcapital
この会社は昔から2次市場での売買ができるようになっていますので、参加したかったがクローズしてしまったラウンドなどで買いそびれたスタートアップ企業の株を二次市場で他の投資家から買うことができます。結構シンプルなサイトですがスタートアップ企業の情報量が多くまとまっている印象を受けます。
Equifund CFP
私は初めての投資がたまたまこのプラットフォームからになったので紹介しますが、ここはヨーロッパ発祥のようでアメリカでは後発のようです。スタートアップ企業もそれほど紹介しているわけではないですが、定期的にくるいろいろなクラウドファンディング関係のニュースが結構勉強になる内容が多いです。また、たまに講習会的なミーティングやセミナーも開いていて、扱っている企業のCEOとZoomミーティングを開催してインタビューする事もたまにあります。家庭的な感じで私は好きな所の一つです。