資金調達のステージとは
スタートアップ企業のビジネスの利益は一般的に知られるJ-カーブに従う場合が多いと言われています。皆さんもエクイティクラウドファンディングに投資する際はこの事実を頭の片隅に入れて投資を行う事が大事だと思います。J-カーブに伴う資金調達のパターンは各状況での段階を経て行う事が多く、この各段階はステージと呼ばれます。ここではJ-カーブについて軽く触れた後に、一般的に使用されている各ステージについて見ていきましょう。
J-Curveとは
J-カーブでは下の4つのステージがあります。この区切りは別に明確な線引きがされているわけではなく、その辺りで資金調達がされた場合はどこどこのStageでの資金調達という形で認識されるといった感じでしょうか。各Stageでは複数回の資金調達がされる場合があり、それぞれはラウンドと呼ばれます。
Source:Lionel Guerraz’ blog
Seed Stage
Seed stageは見た目通りValley of Deathと呼ばれるJの底部分に向かっていく所になります。売上がないので当然と言えば当然で利益の部分はマイナス方向に沈んでいく事になり、支出のみが続くStageです。投資は自己資金や家族友人からが中心になりますが、エンジェル投資家や、たまに物好きな勇者が参加するかもしれません。
Early Stage
Seed Stageを抜け出すと、少し売り上げが入りだしますので支出を部分的にカバーできるようになりますが、まだ支出が続いているところが多いでしょう。Early Stageの最初のラウンドでの資金調達はテスト的なプロダクトやサービスを狭いマーケットに提供したり、従業員を増やしたりするのに費やされます。そしてテストが成功して会社の将来性が見えてきた所でさらなるスケールアップのための資金調達が2回目のラウンドで行われ、もしかするとこの辺りから売り上げが支出をカバーしてブレークイーブンになるかもしれません。ベンチャーキャピタルが参入してくる頃で、我々クラウドファンディング投資家の出番です。
Series-A
Early Stageを抜けた会社はかなり強くなっているので将来性も確信できるので、最初のラウンドではビジネスのスケールアップを目的に資金調達がされます。Early Stageと同じような顔ぶれの投資家ですが、銀行なども融資をし出す頃ではないでしょうか。
Series-B 以降
この段階まで会社が成長すると、いくつかのラウンドでさらなる規模拡大が行われますが、最終ラウンドではIPOの審査に通る事を視野に会社の規模を大きくしたり審査のコストを準備したりという大詰めの段階になります。この辺りは担当投資銀行やIPOを扱う引き受け証券会社なども入ってくる頃ですね。
Seed Stage
Seedとは種という意味ですのでそのまま種植えの段階です。会社の創業者はアイデアのみはありますが、実際にマーケットでテストしたり、検証したり、法的な書類作成などは行っていません。自分の知人や友人から借りたり自己資金を使いながらさらに資金調達をしてビジネスをスタートさせる段階がSeed Stageと呼ばれます。その名の通り、このステージがなければ種が地面に埋まることはないのでビジネスとしてスタートする事はなく、頭の中のアイデアで終わります。
この段階が一番リスクの高い状態で、90%のスタートアップはこの時点で失敗すると言われています。
失敗する理由としては、
資金調達がされると従業員も増えるのですが、創業者が自分のコントロールを失いたくないために権限を他のメンバーに移すのを渋り、チームとして円滑に事が運べない
スタートアップは創業者が色々なことに精通しているべきですが、創業者にスキルがなかったり、エネルギッシュにそのスキルを習得することを避けたり、そもそもハードワークを避けたりなどの創業者のメンタルが原因のケース
このステージの投資家は創業者自身はもちろんですが、他の投資家はFFFと呼ばれています。FAMILY, FRIEND, FOOL(笑)です。ファミリーやフレンドはわかりますが最後のフールというのは部外者で投資しているバカという事ですね。それくらいリスクが高いという事が理解できます。
この時点の投資家はビジネスよりも創業者を個人的に応援しているケースが多いと思います。
創業者はスタートアップ経験が豊富なアクセラレーターやインキュベーターなどに助けられながら成長していく事になります。
エクイティクラウドファンディングでこの段階で参入する事はまれだと思いますのでFOOLになれるチャンスは残念ながらあまりなさそうですね。(笑)
Early Stage
ようやくスタートアップ企業はSeed stageを乗り越えてやっとテストプロダクトなどを売り出せる状態になってきます。この段階ではSeed stageで調達した資金が底をついてくるので新たな資金調達が製品の量産やセールスの拡大の為に必要になってくる段階です。Seed stageを乗り越えて出したプロダクトは将来性のあるものと認識はされますが、Early stageではより大量に広範囲にプロダクトを広げていく必要があります。広範囲といっても今までのテストよりという意味で、地元の一部のエリアにサービスを提供するという範囲になります。
この段階では利益が入ってくる段階ですので支出を収入が補いだす状態になり、J-カーブが上向きの方向に変わりだす変曲点の位置になります。
このステージでは、規模の拡大に伴うリスクが考えられます。
ビジネスのサイズアップは滞りなく行え、コストの上昇など期待外の損失の可能性はないか。
お客さんの満足度は満たされるかやマーケットシェアは獲得できるのか
下請け業者などが会社の規模のスケールアップについてこれるのか
この時点で投資する場合はビジネスの将来性やプロダクトの強さ、マーケット動向などを考えてDeal flowに参加するかどうかを決定する必要があります。私はこの段階が我々クラウドファンディング投資家のメインのターゲットになると思います。
Series-A,B,C…
スタートアップ企業はEarly stageでのテストプロダクトを成功させて次は大量生産モードに入るためにさらなる規模拡大の資金調達が必要になります。この初めの段階はSeries-Aと呼ばれてベンチャーキャピタルなどが参入しだすタイミングです。
その後、Series-B, Series-C, Series-D…と資金調達が繰り返されますがこの各段階はラウンドと呼ばれます。この段階のどこかで会社の利益はプラスに転換します。スタートアップ企業はValuationで大きさが図られますが、この段階では企業のシェアを多く手に入れようとした場合はSeed Stageで投資した投資家と同じくらいのシェアを何倍も多く投資する必要があります。
Seriesの最終段階では企業はIPOのコストのための資金調達をして投資銀行などとIPOの手はずを整える準備に入ります。この最後のラウンドはBridge-financingなどと呼ばれ、IPOまでのつなぎの資金調達という認識になります。
ここまで来るとあとは座してIPOを待つという段階に来ますので成功はすぐ目の前ですね。場合によっては持ち株を増やして会社のシェアを維持するための追加投資なども考えてもいいかもしれません。
Stage毎に投資する必要があるか
最期に株の希薄化について少し考えてみたいと思います。初めに投資した額で買った株は各ラウンドを経るごとに資金が流入することで希薄化していきます。
Seed Stageで$1000投資をしてもその後のStageで会社が新株発行で資金調達すると持っている会社のシェアの比率が希薄化により下がります。それを防ぐためには初めのラウンドで投資して終わりではなくその後のラウンドでも引き続き投資をする事によって自分の持っている会社のシェアの比率が下がる事を軽減する事が出来ます。
ただ、Seed Stageで$1000投資していればIPOまでこぎ着けた段階で株価が上がりますので会社のシェアを心配しなくても多額の利益が確定しているのでそこまで心配する必要はないと思いますが、戦略としては数撃ちゃ当たるのショットガン戦略で一発投資して次のターゲットに行くか、しつこく同じ会社に撃ち続けて希薄化を防ぐ戦略で行くか個人の好み次第で判断する必要があるのではないでしょうか。